尾張名古屋の地鶏の頭領とあがめられている『コー大王」と中国のバフコーチンの
娘との間に生をうけた希有な妖怪が、このストーリーの主人公「キミノケ」だ。彼は素晴らしい容姿を備え、頭も良く、機転が利くうえ他人に優しいという性格
の持ち主ゆえ周囲からも尊敬を集め、愛される存在であった。このような状況を
『コー大王』夫妻は好ましくおもい、してやったりという感慨に耽っていた。
其のキミノケの噂を聞き及んだ，上海のキョンシー一族の血縁関係にある喰道楽
一家のやんちゃ坊主「おねだりくん」がどうしてもキミノケの仲間になりたいと
いって，中華麺をどんどんのばし尾張の地までに届かせ馳せ参じ，キミノケと厚
い友情をかわした。ただ　おねだりくんは誰彼となく食べ物をせびるのがたまに
キズ。特に小籠包とフカヒレスープには目がない。

そしてもう一人、風の便りにいてもたってもいられず俵特急を仕立ててキミノケのと
ころにやってきたのがコシヒカリの産地越後の米の精「マンマ」であった。マンマは
キミノケの正義感に心酔しラブコール。キミノケも快く受け入れ，ここに三人の生涯にわたる友情が芽生えたのだった。
そして忘れてならないのが、ウズラの卵であるものの怪「ウズラー」で、はるばる朝鮮半島から彼を慕ってやってきた。彼は危険を
感じとると体をゴムまりのようにして身を守るのだが、その能力は素晴らしく眼は千里を見通し、耳は三里離れた音を聞き分け、鼻
は十里先の匂いを嗅ぎ分け、100K先を1分程で走破する能力を持っているが、少しおっちょこちょいで間抜けなところがある。しか
しキミノケにとってはすごく頼りになる存在だ。

そんな折り一見平穏そうに見えた尾張のものの怪達を震撼させる出来事が勃発した。闇夜のカラス軍団が連日名古屋コーチンの卵を
食い荒らすばかりか，名古屋コーチンさえも襲いかかり残忍な行為におよぶまでに至った。
それを知った『コー大王』は怒り心頭、キミノケに仲間の妖怪達をあつめるよう命じ自らも先頭に立って闇夜のカラス軍団に立ち向
かっていった。キミノケ達はもてる術を繰り出し対抗、応戦したが戦況は一進一退を繰り返し、抗争は何年にも及び、両者疲弊した
ままいつの間にか争いは収まっていった。もののけ達も傷つき，名古屋コーチンの多数が犠牲となり、卵も生産することができない
という大打撃を被った。この諍いがキミノケ達と闇夜のカラス軍団との何百年と続いていく確執の発端であった。